「夢を喰う男」本城雅人著
北海道のサラブレッド生産牧場「ノースヒルズ」の代表、前田幸治は、生まれた馬を売って生計をたてるのではなく、馬を売らず、自分の名義で走らせるオーナーブリーダーだった。数年前から馬を鍛えたり休養させたりするために、鳥取の大山ヒルズに預けていた。
真夏のある日の午前1時半、大山ヒルズのゼネラルマネジャー、斎藤慎は、ガタンという物音を聞いて飛び起きた。厩舎では2020年の3冠馬、コントレイルなどを預かっている。あの音は馬が壁を蹴った音だ。馬が骨や腱を痛め、競走馬生命が絶たれてしまうこともある。獣医も駆けつけ、問題ないことを確認したが、斎藤はその後、一睡もできなかった。
多くの名馬を送り出した男の半生を描く。
(幻冬舎 1760円)