「自民党の統一教会汚染」鈴木エイト著/小学館
統一教会の闇は深い。それに著者は文字通りの突撃取材をしてきた。
「追跡3000日」である。巻末に「関係があった現職国会議員168人」の一覧が載っているが、私は本文中で著者が言及している菅義偉の両腕(だった)菅原一秀と河井克行に注目した。山際大志郎や萩生田光一も登場するが、いま、菅と統一教会との関係が看過されているような気がするからである。
菅原は安倍(晋三)内閣の官房長官だった菅の推しで経済産業大臣に抜擢された。菅原の両親は菅と同じ秋田県立湯沢高校を卒業している。菅原は菅をバックアップする「令和の会」を立ち上げたが、無派閥ながら、明確な菅印だった。
また、法務大臣となった河井が主宰する「向日葵会」も“菅グループ”と目されていた。
菅に近いこの2人が共に失脚したことは記憶に新しいが、菅原も河井も統一教会とはとりわけ深い関係だった。
菅は2017年に教会幹部の北米大陸会長一行を首相官邸に招待したという。
著者によれば、教団は「統一教会を日本の国教にする“国家復帰”の野望」を持っていた。そして、統一教会と関わりのある議員がほとんどと言っていいほど改憲論者であることも大問題である。
2017年に教団が開催した1万人集会の大阪大会で参議院議員の柳本卓治(自民党)がこう挨拶している。
「現在、わたくしは参議院の憲法審査会会長という天職をいただいています。憲法というのはどこの国でもそうでございますけれども、国のあり方、未来の方向性というのをきちっと示していかなければならないわけですけれども、何が大事かといえば愛を持って家庭を築いていくということ、これが一番であることであります」
しかし、統一教会が家庭を壊していることは明らかではないか。
10月8日号の「週刊東洋経済」には「統一教会『密接企業』リスト」が載っている。代表格がハッピーワールドで、「幸世商事」から「世界のしあわせ株式会社」を経て、現在の社名になった。高麗人参茶の輸入から始まって多宝塔、壺、印鑑へと商材を広げ、信者が外交員となって訪問販売していた。
鈴木本を教科書とすれば、弁護士の山口広ほか著「統一教会との闘い」(旬報社)も副読本として有益である。 ★★★(選者・佐高信)