「Believe It 輝く準備はできてるか」ジェイミー・カーン・リマ著/森田理沙訳 東洋経済新報社

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 1977年生まれの著者は、自宅のリビングでつくった化粧品会社「イットコスメティックス」を米国最大級の高級化粧品会社に育て上げた。その後、ロレアルに12億ドルで売却し、100年超の歴史を誇る同社ブランド初の女性CEOに就任。フォーブス誌による「自力でもっとも稼いだアメリカ人女性」にも選ばれた。

 彼女は「酒さ」という顔に赤みやほてりが出る病気を発症。自社のコンシーラー(クマやシミを隠す化粧品)を使えば、それを見事に隠せることをアピールしたかった。通販番組QVCでどう表現するか。著者の強い意志と、PRの定説を疑う様が描かれている。テレビ通販関連のコンサルタントからはこう助言されたという。

〈うまくやる唯一の方法(中略)非の打ち所がない美肌のモデルを使うこと〉

 これに対し著者は「非の打ち所がない美肌の人にコンシーラーを使う意味って何ですか?」「私みたいな肌トラブルを抱える人がそれを見た時、この商品は自分に効果があるって、どうしてわかるんですか?」「(視聴者が70歳女性だとして)20歳の子が商品を使うのを見て、自分に効果があるかどうかなんてわかりませんよね」と反論する。

 正論である。その上で、「私の顔を覆う真っ赤な酒さをさらけ出し、すっぴんの状態で出る」とも主張。当然、コンサルは反対した。

 本番当日、著者はすっぴんで登場し「使用前・使用後」の写真を紹介。その結果、会社の存亡をかけた6000個のコンシーラーが売れ、さらには追加で3000個の発注が来た。ここから著者の快進撃が始まり、前出の通りの売却益を得て、大金持ちになったのだ。

 さらには憧れのテレビ司会者オプラ・ウィンフリーの自宅に招かれるという体験をした。彼女のインスタグラムにはその時の写真も掲載されている。

 本書では著者の数々の挫折やコンプレックス、冷遇された経験が描かれ、それを本人の努力と周囲の協力、素晴らしい人々との出会いで乗り切り、果てには大成功する様が次々と描かれる。それはまるでおとぎ話のようで、読者は大いに励まされるだろう。

 とはいえ、全編にわたってドラマチック過ぎるし、アカデミー賞の前夜祭に参加したことなど、自慢話だらけなのが若干鼻についてくる。さらに男性にとっては各種化粧関連用語が一体何なんだか分からない。私は「コンシーラー」さえ何だか分からなかったが女性にとっては胸躍る本だしビジネスの「波」の掴み方を知る上では万人に役立つ。野心家女性にぜひ推薦を。 ★★(選者・中川淳一郎)

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