「絵画で読む『失われた 時を求めて』」吉川一義著
20世紀文学の最高峰といわれるプルーストの「失われた時を求めて」を絵画を案内役に読み解くアートテキスト。
同書は、主人公の「私」の少年時代から晩年にいたるまでの回顧談。その人生の最大の事件が恋愛だ。まずは、私が少年時代に心をときめかせた娘ジルベルト、青年期のアルベルチーヌとの大恋愛、それらの前触れとして描かれるジルベルトの父親スワンの経験した恋について論じる。スワンは当時はまだ知られていなかったフェルメールを研究する美術通との設定。フェルメールやボッティチェリなど、作中で言及される画家たちの絵画を紹介しながら、その意味を解説。その他、病気と死や、同性愛、そして情景の描写にも援用されるさまざまな絵画を紹介しながら、小説の主題に迫る。
(中央公論新社 1034円)