「商業美術家の逆襲」山下裕二著
美術史上、正当な評価を受けてこなかった「商業美術家」たちを再評価するアートテキスト。
出版・大衆文化が興隆した大正から昭和初期にかけて、挿絵や装丁の分野に才能ある画家が集結。日本美術の伝統を継承し、新たな表現を開いてきたのは、むしろ、こうした商業美術家らだったという。
すっかり忘れられていた花鳥画の名手・渡辺省亭、今でこそ近代日本画の巨匠と認められるが、前半生を挿絵に捧げた鏑木清方、その清方がライバルとしてリスペクトしていた小村雪岱ら、江戸の粋を継承する画家たちをはじめ、彼らの影響を受けた戦後のグラフィックデザイナーやマンガ家たちまで、商業美術家たちの作品を鑑賞しながらその凄さを解説。彼らを本流として明治以降の美術史を再考する。
(NHK出版 1210円)