「慶喜暗殺」阿井渉介著
慶応4年、元幕臣の土肥庄次郎は、今は静岡藩となった駿府の元代官所に忍び込む。蟄居(ちっきょ)中の元将軍・徳川慶喜を暗殺するためだ。戊辰戦争で九死に一生を得た庄次郎は、敵前逃亡したかつての主君がどうしても許せなかったのだ。
しかし、邸内から現れた覆面の男に阻止される。凄腕のその男は警護を担当する伊賀者ではないようで、伊賀者が現れると男もその場から逃走する。追跡をまいて庄次郎は滞在先の駿府2丁目遊郭に逃げ込む。偶然にも、庄次郎が潜伏する遊郭のやり手婆は、かつて江戸の土肥家で下女をしていたセキだった。その夜、庄次郎は遊郭で意外な人物と再会を果たす。
旗本から吉原の幇間(ほうかん)に転じた松廼家露八の生涯を歴史上の人物との交流とともに描く長編時代小説。
(徳間書店 880円)