「ちとせ」高野知宙著
明治5年、博覧会が開催されることになって京都はざわめいている。16歳の俥屋の息子、藤之助は、鴨川の河原で三味線を弾く少女に出会った。
丹後の漁師の娘、ちとせは、疱瘡(ほうそう)にかかってあばたができたうえに、視力も落ちてきた。視力を失っても三味線で食べていけるように、京に出てきて、河原で練習していたのだ。
毎日、三味線を聴きにくるようになった藤之助は、人力車に外国人を乗せて以来、京の町がどんどん変わっていくことに気づく。いずれは自分も店も変わらなくてはならないだろう。ちとせの目が見えるうちに奇麗なものを見せてやろうと、京の町をめぐることに。
17歳の新人による、第3回京都文学賞中高生部門の受賞作。
(祥伝社 1760円)