「てらこや青義堂 師匠、走る」今村翔吾著
明和7(1770)年、小旗本の次男・十蔵が日本橋松川町に寺子屋「青義堂」を開いて5年が経った。「いかなる子であろうとも見捨てはしない」との信条を貫く十蔵の元に通うのは、よその寺子屋で断られたいわくつきの子どもばかり。競争が激しい寺子屋の経営は厳しく、十蔵は金のために往来物と呼ばれる教本の執筆を思いつく。選んだ題材は忍術だ。
実は十蔵の実家の坂入家は伊賀組の与力で、裏で公儀隠密を務めている。十蔵は伊賀組始まって以来の鬼才と呼ばれた忍びだったが、今は足を洗っている。そんな中、教え子らの付き添いで伊勢に向かう十蔵に兄から将軍暗殺を企てる一団・宵闇に関するよからぬ知らせが届く。
人気作家の原点ともいえる青春時代小説。 (小学館 902円)