こじれる統一教会問題

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「統一教会とは何か」有田芳生著

 岸田政権の存亡を左右しかねないほどこじれる統一教会問題。



 ジャーナリストとしてオウム真理教問題に鋭く迫り、参院議員として拉致問題、差別やヘイトスピーチ問題と真っ向から取り組んだ著者。他方で統一教会問題については既に40年、その間に書いた関連書は6冊にものぼる。

 本書は30年前に刊行した旧著の改訂新版だが、序章は30年間の変化を踏まえ、特に安倍晋三元首相の事件に至るまでの経緯を踏まえた長文の序章とあとがきを追加している。

 本書では「週刊文春」やテレビ番組を拠点にした90年代の取材リポートが再録されているが、拉致問題の解決に統一教会が深くからんでいたことがわかる。もともと反共イデオロギーでつながる韓国軍事政権に呼応した文鮮明教祖と日本の政治家が結びついた「国際勝共連合」の結成がベトナム反戦真っ盛りの1968年。安倍氏の祖父・岸信介も一翼を担っていた。

 その後、86年の中曽根康弘内閣時代に再び自民党に接近した統一教会。安倍氏の父・安倍晋太郎議員を日本の総理に、の応援を組織として行った。霊感商法問題で悪評だった統一教会とは距離を置きたいものの、集票組織としては捨てがたいという計算が腐れ縁となり、結局は襲撃事件の歴史的背景をなしていったのだと分析する。まさに長年の取材に裏づけられた真相だろう。

(大月書店 1650円)

「統一教会と改憲・自民党」佐高信著

 岸信介と安倍晋三の祖父・孫コンビが統一教会と深い関係にあったことはいまでは周知の事実だろう。しかし、彼らを含む“自民党改憲派”がことごとく関わりを持っているという本書の指摘は鋭い。確かにその通り。改憲論者は多くが反共主義者。統一教会の創始者・文鮮明が、朝鮮半島の南北統一を悲願とした朴正煕の勝共運動を受けて日本で創設したのが国際勝共連合だ。

 本書は著者があちこちに書いた短いエッセーの論集だが、著者の一貫した姿勢と豊富な情報網でほかにない読みごたえになっている。トランプと統一教会がズブズブの関係などと端的に指摘するコラムは類を見ないだろう。

 立憲民主党の国対委員長でありながら自民にすり寄るかのごとき安住淳、「NHK的中立性」を崩さない「草食獣」の池上彰、リベラルを気取るも天皇制のことがわかってないという高橋源一郎などなど、一刀のもとでの斬れ味もいい。

(作品社 2200円)

「統一教会何が問題なのか」文藝春秋編

 雑誌の特集号がいいのは、それ一冊で大体の情報と知識が得られること。本書はその意味で雑誌的な作りの新書といえるだろう。

 統一教会は2009年、霊感商法の疑惑で警察の捜査を受けた。この打撃で教会は霊感商法の見直しとともに政界との関係強化を図る方向へと転換。そこで対象となったのが、折からの総選挙で大敗し、下野した自民党だ。なかでも安倍晋三は戦後最年少で総理となっただけに統一教会の働きかけは強かった。

 安倍は母・洋子が警戒するよう忠告したといわれるが、組織力にすぐれた宗教団体は政治家にとって強い味方。12年の第2次安倍内閣誕生にも統一教会は大いに貢献したのである。

 統一教会の教義から合同結婚式の裏面、信者家族の苦しみなど、多方面の切り口はまさに雑誌的フットワークの産物だ。

(文藝春秋 935円)

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