「あの日々」髙木國雄著
弁護士の平松達夫は40年ほど前、駅前で不当解雇を訴えていた松野自動車販売の労働組合委員長、山木茂と知り合った。
裁判所で研修を受けているとき、その山木が腰縄を打たれて連行されるのを目にする。山木が貼っていた会社を非難するビラをはがしにきた中島係長を足で蹴って2週間のケガをさせたという。山木は身に覚えがないと否定する。平松の先輩の福森弁護士が松野自販の吉田課長に尋問を行った。
被害に遭って4日後に告訴の手続きをしたのはなぜか、裂傷で出血しているのに、近所の病院ではなく郊外の医院を受診したのはなぜか。吉田課長は最少の言葉でそれらを説明しているように見えた。
ベテラン弁護士が法曹界の闇を描いた法廷小説。
(作品社 1980円)