「ここが終の住処かもね」 久田恵著
雑誌ライターをしていたシングルマザーのカヤノは、かつて取材で訪れたサービス付き高齢者向け住宅「ピラカンサ」が気に入って入居した。
実家で両親の介護を終えた後、独立したはずの息子と娘が帰ってきた。家賃を払うというので、ピラカンサハウスでの生活費が捻出できることになったのだ。そこで知り合いになったサワに相談があるといわれ、カヤノは「カフェそよ風」に向かった。途中の丘の道でソフト帽をかぶった見知らぬ高齢の男性を見かけて、「この先にカフェがあるもので」と声をかけて通りすぎた。
夏になって、カヤノはふと思いついてオルゴール美術館を訪れた。展示室で出会ったのは、あの日、丘の道で会った高齢の男性だった。彼はなぜかカヤノの名を知っていた。
70代の新しい出会いを描く、のびやかなシニア小説。
(潮出版社 1650円)