「そのマンション、終の住処(ついのすみか)でいいですか?」原田ひ香著
団地を自分流に改装して暮らすみどりは、父から相続した赤坂の「ニューテラスメタボマンション」のペントハウスの権利を放棄する。その建物は、奇抜な外観から「おっぱいマンション」と呼ばれる有名建築家だった父の代表作だった。しかし、築45年を経て雨漏りなどがひどくなり、改修か建て替えかで住人たちがもめているらしい。
元教師の市瀬は、地方で借家住まいを続けてきた。しかし、娘の就職を機に妻が都内への引っ越しを希望。気乗りがしなかった市瀬だが、妻が持ち帰った「ニューテラスメタボマンション」のチラシを見て心が動く。学生時代に一度だけ、そのペントハウスに入った時の思い出が蘇る。
欠陥住宅をめぐり新旧住人の思惑と人生が交錯する連作小説。
(新潮社 649円)