「家康の天下取り」 加来耕三著
天下の覇者、秀吉に仕え続けた家康は律義者と目されていたが、実はたけだけしい本性を持った人物ではなかったか。
譜代の重臣の息子に斬殺された祖父、松平清康は激越な性格だった。そんな松平の血を受け継いだ家康の長男、信康は、みすぼらしい装束の踊り手を矢で射殺するなど、凶暴な振る舞いが多かった。
織田信長が徳川の家臣の酒井忠次に、信康に謀反の企てがあるか問うと、忠次は否定しなかった。
清康は信長の命で切腹させられたが、家康はその報告を泰然自若として聞いた。動揺を見せれば忠次が謀反し、徳川の家臣は四散して、織田軍が攻めてくるからだ。家康は自分の感情や欲望を捨て、組織と一体になることで生きのびたのだ。
凡庸に見える家康の戦略と指導力を考察する一冊。
(つちや書店 1980円)