「家康はなぜ乱世の覇者となれたのか」安部龍太郎著
戦国時代、多くの武将が戦いのなかで自己実現を図る中、唯一、本気で平和を求めていたのが家康だったと著者は言う。
家康がなぜ戦国時代の最終的な勝者となったのか。世界史と照らし合わせながら戦国時代を読み解いた歴史読本。
日本の戦国時代は世界的には大航海時代にあたり、くしくも家康が生まれたのは種子島に鉄砲が伝来したとされる年だ。戦国の日本が西欧文明と出合った象徴的な年でもある。大航海時代の世界との遭遇という大きな危機を迎えた16世紀の日本は、国政を転換する必要に迫られ、信長と秀吉により外国との貿易によって国富を増大させる「重商主義政策」と「中央集権政策」が強烈に推し進められた。しかし、秀吉の朝鮮出兵によって国が荒廃。関八州の再建を成功させた家康がとった政策が、国家運営の基礎を農業におく「農本主義政策」と「地方分権政策」だったという。
戦国時代と当時の世界情勢を照らし合わせながら、家康の足跡をたどり、新たな戦国時代像を浮かび上がらせる。
(NHK出版 1540円)