「大学病院の奈落」高梨ゆき子著
「大学病院の奈落」高梨ゆき子著
北関東の医療拠点・群馬大学病院で、3年間の間に腹腔鏡による肝臓手術を受けた患者約100人のうち、少なくとも8人が術後に容体が悪化し死亡。8人を執刀したのはいずれも第2外科(消化器外科)の同じ医師で、同外科では手術に必要な院内の倫理審査を申請していなかったことが分かり、2014年秋、病院は院内調査委員会を設置した。
肝臓切除手術を受けた後に亡くなった60代の男性は術前に「傷が小さくて体にやさしく、回復が早い手術」と説明を受けたが、術後3カ月、重い合併症に苦しみ続けた果てに亡くなった。
白い巨塔内の醜いポスト争いなど、このような事態が起きた背景に迫るとともに、遺族の悲しみと憤りに寄り添ったドキュメント。
(講談社 858円)