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「習近平三期目の狙いと新チャイナ・セブン」遠藤誉著

 中国の全人代(全国人民代表大会)で異例の3期目に突入した習近平。その野望は限りを知らない。



「習近平三期目の狙いと新チャイナ・セブン」遠藤誉著

 既に伝統となっていたはずの慣例を無視して中国共産党の総書記3期目に突入した習近平。併せて発表された党幹部も、ほぼ全員が習本人か彼の父とつながりのある人材ばかりという点も目を引いた。まさに“お友だち内閣”もいいところだ。

 しかし、著者の探究は表面だけにはとどまらない。戦時中に中国に生まれ、幼い身で戦後の国共内戦の時代を生き延びて日本に帰国した著者は中国共産党に複雑な思いを抱き、いまや異色の中国ウオッチャーとして知られる。

 その人が中央政治局常務委員、通称「チャイナ・セブン」の新しい顔ぶれに不可解な点を発見する。筆頭副首相に就任した丁薛祥が、もとは党大会に参加する資格もない末端党員だったにもかかわらず、10年前から突然、習近平の側近に取り立てられてきたことに気づいたのだ。

 著者は本書の最初を費やして丁を重用する習近平の思惑を読み解く。その陰には、今やアメリカを追い抜く勢いを示すハイテク技術への努力の傾注があるという。さらに著者は全人代の出席者たちの様子を凝視しながら習近平の父・仲勲時代からの権謀術数の因果を読み解く。

 まさに権力闘争の伏魔殿が垣間見える。

(PHP研究所 1100円)

「2035年の中国」宮本雄二著

「2035年の中国」宮本雄二著

 かつて在中国の特命全権大使だった著者。今も日中関係学会の会長など対中関係のエキスパートとして知られる。

 江沢民政権以来、中国は「二つの百年」計画を公表した。「一つの百年」は2021年までに「ややゆとりのある社会」を築くこと。これは既に実現された。「二つ目の百年」は建国100年の2049年までに「富強の民主的で文明的な調和のとれた美しい、社会主義現代化を実現した強国」をつくり上げること。習近平は後者のスケジュールを22年から35年までと、36年から50年ごろまでと2段階に分け、今世紀の半ばには「世界の先頭に立つ」と公言したのだ。本書のタイトルはここに由来する。

 著者は中国の内政に注目し、習近平が世論をいかに重視しているかを強調する。たとえば、環境保護のパリ協定に中国が前向きになったのは、大気汚染が市民の苦情を呼んだから。共産党総書記に就任した直後にも「人民の素晴らしい生活に対する憧れ」の実現こそが「奮闘目標」と語っている。

 鄧小平以来の「生活水準の向上」をはるかに上回る目標で、著者は中国の国民が収入増だけでは満足しなくなっている現実の反映がここにあるのだという。日本の国民の感覚で中国の国民を判断すると間違う、と著者は直言している。

(新潮社 902円)

「中国は『力』をどう使うのか」加茂具樹、鄭浩瀾ほか著

「中国は『力』をどう使うのか」加茂具樹、鄭浩瀾ほか著

 グローバル化が進むにつれ、国際的な市場で競う国々の違いも際立ってきた。特に近年は中露など権威主義体制の国家と自由主義国家の違いが目立つ。

 その状態を、海外を含む専門家たちの論文で構成した本書は「不安全感」という言葉で表す。米国主導の国際秩序に対する反発や、基軸通貨のドルに取って代わろうとする競争心などが混じり合った「制度性話語権」を確立しようとする野望がそこから出ているというのだ。「話語権」とは、「自国の議論、言説に含まれる概念や論理、価値観、イデオロギーによって生み出される影響力」。言い換えれば、自分の発言を相手に受け入れさせる力であり、アメリカがこれを独占している状態に、習近平の中国は挑もうとしているわけだ。

 そこで本書は、中国共産党の一党支配が長年、強固に維持されてきた理由を解剖する。これを国内政治、経済、国際政治の3つの観点で読み解く論文が合計13編。

 専門書だが、中国ビジネスに関わる一般人にも関心がありそうな議論が並んでいる。

(一藝社 2970円)

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