「『利他』の生物学」鈴木正彦、末光隆志著
「『利他』の生物学」鈴木正彦、末光隆志著
メリットを期待するわけでもなく、つまずいた幼児やお年寄りにとっさに手を差し伸べるような行為を利他的行動という。こうした利他的行動は、進化の過程でどのように生じたのか。そして本当に他の個体のために行っている行為なのか。
利他的行動の方が、利己的行動よりも集団としてのメリットが大きいという説がある。しかし、ミーアキャットのように、属する集団を守るために見張り役を行う哺乳類や鳥類の場合、見張り役は黙って逃げると群れから離れ、リスクが大きくなるので、警告音を発して仲間と一緒に逃げる方を選んでいるとも考えられ、警告音を発するのは純粋な利己的行為ともいえる。
動植物のさまざまな「共生」の事例を紹介しながら、そうした生物の利他性、利己性について解説する科学テキスト。
(中央公論新社 968円)