動物との共生!人間と動物の関係を考える本特集

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「キツネとわたし」キャサリン・レイヴン著、梅田智世訳

 近年、街中に姿を現すアーバン・ベアやねぐらを失ったムクドリなど、人と動物の領域が重なりつつある。知らず知らずのうちに関わりを持ち、互いの生死も左右したりする。今回は、人間と動物の関係性について考える本をご紹介。

「キツネとわたし」キャサリン・レイヴン著、梅田智世訳

 人里離れた小さなコテージで暮らす生物学者の著者は、ある日1匹の野生のキツネと出合う。そのキツネは、毎日16時15分にコテージの玄関先に現れ、著者はキツネに「星の王子さま」を読み聞かせするようになった。キツネとの不思議な関係に愛おしさを覚えるものの、学者としての意識はキツネを友達として受け入れることに抵抗を覚えていた。しかし、いつしかキツネと深い絆を感じるようになっていく……。

 サウス大学教授で、イエローストーン国立公園の公園管理官を務めた経験を持つ著者による人と動物の共生を描いたエッセー。ロッキー山脈の大自然や、過酷な環境で生きるさまざまな動物に対するまなざしが生き生きと描写されている。ニューヨーク・タイムズ・ベストセラー、ノーチラス・ブックアワード金賞受賞作品。 (早川書房 3630円)

「ヒト、イヌと語る」菊水健史、永澤美保著

「ヒト、イヌと語る」菊水健史、永澤美保著

 イヌはほかの動物と比べると抜群に人間と深い絆を結べる能力を持っている。伴侶動物とも呼ばれ、家族の一員という位置に鎮座することも珍しくない。

 動物行動学を専門とする菊水氏は、一研究者としての立場ではなく、愛犬コーディーを迎えた経験をもとに、その誕生からお別れまで時系列でたどりながら飼い主目線でイヌの行動の背景を考察。菊水氏と同じ研究室に所属し、コーディーをよく知る永澤氏がイヌ目線から見たヒトとの生活を描いた文章とコラボさせることで、ヒトとイヌの暮らしの全体像を浮かび上がらせている。菊水氏はコーディーを迎えるにあたり、ヒトがルールを教えるのではなく、何がルールなのかをイヌ自らが学ぶように仕向けようと決めた。

 ヒトと関係性を結べるイヌという種の奇跡に改めて魅せられる。 (東京大学出版会 2420円)

「幻のユキヒョウ」ユキヒョウ姉妹(木下こづえ・木下さとみ)著

「幻のユキヒョウ」ユキヒョウ姉妹(木下こづえ・木下さとみ)著

 ロシア・中央アジアから南アジアにかけ、12カ国に生息するユキヒョウ。ネコ科の動物では世界で一番標高の高い所に住むユキヒョウは、生息数推定8000頭未満といわれている。本書は、そんなユキヒョウに魅せられた双子が取り組む保全活動の記録だ。

 双子の姉・こづえは、希少種の保全・繁殖生理を研究する研究者。妹のさとみは広告業界で活躍するコピーライター。ふたりはそれぞれの専門性を生かした任意団体「twinstrust」を結成し、「まもろうPROJECTユキヒョウ」を立ち上げた。本書では、モンゴル、インド、ネパール、キルギスの生息地での活動の様子のほか、クラウドファンディングを利用した活動資金調達などについて言及。

 研究者と表現者の協力体制が、人と動物が共存する未来を予感させる。 (扶桑社 1760円)

「たぬきの本」村田哲郎、中村沙絵ほか著

「たぬきの本」村田哲郎、中村沙絵ほか著

 人間の生活圏内で気配を感じさせつつも、ペットや家畜になることもなく、人とつかず離れずの関係を続けてきたたぬき。時に民話の主人公になったり、置物として店先に置かれたりと、身近な動物として存在してきた。本書は、たぬきに取りつかれた5人の著者がそれぞれの角度からその魅力を解説。各人のたぬき愛あふれる行動力と分析力が織りなす、バラエティー豊かな世界が楽しめる。

 例えば、排水溝に落ちて瀕死状態になったたぬきの子の面倒を見た南氏の飼育の記録を読むと、人慣れしにくいたぬきの生態が手に取るようにわかる。さらに、たぬきの置物情報をネットでくまなく集めた村田氏の研究成果を見れば、各地で独自に進化を遂げた街角たぬきに思わず引き込まれるはず。

 巻末には「日本たぬき学会」の新旧会長による特別対談も収録されている。 (共和国 2420円)

「〈絶望〉の生態学」山田俊弘著

「〈絶望〉の生態学」山田俊弘著

 人の活動によって、地球上から多くの生物が姿を消している。現在、絶滅危惧種の動植物の数は少なくとも100万種。かつて、火山活動や隕石の落下が原因とみられる5回の大量絶滅があったが、人の活動を理由とした第6の大量絶滅は加速度を増している。本書は最新の知見やデータからその状況を解説しつつ、生物多様性の喪失を回避する道を探る。

 生物は①生息地の破壊、②乱獲、③外来物の導入、④気候変動の4つの脅威によって生存を脅かされる。特に樹木やゾウのようにゆっくり育つ個体は、減った個体数を回復させる力が弱く、乱獲や資源利用が繁殖力を超えると急速に数を減らす。

 本書では、生物多様性の喪失が人に及ぼす影響を人が認知する難しさを知った上で、忍耐強く理解を深めることの重要性を述べている。 (講談社 2420円)

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