「消えた冒険家」ローマン・ダイアル著 村井理子訳

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「消えた冒険家」ローマン・ダイアル著 村井理子訳

 著者のローマン・ダイアルは、アメリカの冒険家で山岳スポーツのエキスパート。幼い頃に訪れたアラスカの自然や生き物に魅了され、長じて生物学者になった。

 本作は彼の自伝的ノンフィクション。前半は、ローマン一家のアドベンチャーファミリーぶりが描かれる。ローマンと妻ペギー、息子のコーディー・ローマン、娘のジャズ。4人は大自然の懐に飛び込み、氷原や熱帯雨林を旅した。安全で退屈なルートは決して選ばなかった。息子は、憧れの父と同じファーストネーム、ローマンを名乗り、父と同じ道を歩き出す。2人は冒険旅行と生物学研究の最良のパートナーだった。しかし、家族の光り輝く日々は突如終わってしまう。

 息子ローマンが27歳のとき、単独で出かけたコスタリカの秘境、コルコバード国立公園のジャングルで消息を絶ったのだ。

 この長編ノンフィクションの後半は、最愛の息子を捜してジャングルに分け入る父親の苦闘と苦悩が描かれる。国立公園内への立ち入りを許さない地元警察との軋轢を抱えながら、違法金鉱労働者や密猟者の助けを借りて、息子の足跡を探っていく。彼の身に何が起こったのか。父の助けを待っているのではないか。父はジャングルで何度も「ローマーーン!」と叫び、涙を流した。

 息子に自然と冒険の素晴らしさを教えてしまった自分は、父親として間違っていたのだろうか。後悔と罪悪感が父ローマンを苛んだ。

 捜索を続けるうちに、この事件はジャングルでの遭難ではなく、殺人事件ではないかという見方が有力になっていく。息子が殺された? なぜ? 父の疑問と苦悩は深まるばかりだった。

 先の見えない展開はサスペンスの醍醐味。全編にあふれる父親の深い愛が胸を打つ。 

(亜紀書房 2750円)

【連載】ノンフィクションが面白い

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