「平治の乱の謎を解く」桃崎有一郎著
「平治の乱の謎を解く」桃崎有一郎著
平安時代末期の平治元(1159)年に起きた「平治の乱」の真相に迫る歴史テキスト。
学校では平治の乱を、後白河上皇の院政を主導していた執権・信西に対して廷臣の藤原信頼と武士の源義朝が不満を抱き反乱を起こしたが、官軍の平清盛に撃破され、清盛が武士の最終勝者となったと習う。
しかし、著者は平治の乱から31年後、上洛した源頼朝と会談した摂政の九条兼実が日記に書き残した一節に注目。乱の当事者でもあった頼朝は「父の義朝は忠義の心で、天皇の命令通り挙兵したが、天皇の裏切りで反逆扱いされ、殺された」と兼実に語ったという。
著者は、史料を駆使して、平治の乱が皇位の行方をめぐる二条天皇によるクーデターで、乱後に朝廷が共犯となって天皇の犯罪を隠ぺいしたことを解き明かす。
(文藝春秋 1265円)