「化け者手本」蝉谷めぐ実著
「化け者手本」蝉谷めぐ実著
物語の舞台は、文政時代の江戸。元女形の田村魚之助と、なぜか彼のお供としてたびたび声をかけられる日本橋の鳥屋の藤九郎の元に、不可解な事件の話が持ち込まれた。
依頼の主は、中村座の座元。なんでも、中村座の芝居小屋で「仮名手本忠臣蔵」の演目が終わった後に、客席で男の変死体が見つかったというのだが、その死体は首の骨を折られて、その両耳から棒が突き出た状態だったらしい。
これを口実にお上に興行を止められてはかなわないと、そっと親爺橋の下に死体を動かしてしまったのだが、同心が犯人を捕まえられないまま、同じように殺された2人目の死人が出てしまった。奉行所に知られたら中村一座が手鎖になると思い、魚之助に犯人捜しの依頼をしたというのだ。何かに見立てた殺しが行われたのではという推理のもと、魚之助と藤九郎のコンビが解決に向けて動き出すのだが……。
本書は、著者のデビュー作で第11回小説野性時代新人賞を受賞した「化け者心中」に続く、魚之助&藤九郎コンビの江戸推理劇第2弾。芝居に人生を捧げる歌舞伎役者たちの世界が生き生きと描かれている。
(KADOKAWA 1980円)