佐高信評伝選全7巻完結!7巻ではアフガニスタンで人道活動に取り組んだ医師中村哲氏の姿が克明に
アフガニスタンで長年、医療活動や農地再生などの人道活動に取り組んだ医師・中村哲氏(73歳没)が凶弾に倒れてから、今月4日で丸4年。
また今年は、氏を支援してきた慈善団体「ペシャワール会」の発足40年にあたり、氏の遺志は今も脈々と受け継がれている。
佐高信著「佐高信評伝選7」(旬報社 2860円)では、中村氏が時代と格闘してきた姿が克明に描かれている。
著者は氏を「歩く日本国憲法」と形容。9.11後、国会のテロ対策特別委員会に参考人として招集された氏は「自衛隊派遣は有害無益だ」と断じて、自民党議員から強烈なブーイングを受けた。99.99%が貧者であるアフガニスタンに必要なのは飢餓状態を解消することで、関係緊張を招く自衛隊派遣は負の影響しかない、ということが氏の主張であった。
この発言に議場は騒然。司会役の自民党代議士は取り消しを要求したが、氏は動じなかった。絶体絶命の状況下でも「平和憲法を持つ日本人だから」という理由で何度も命拾いをしてきた氏の信念は覆すことができなかったのである。「憲法は守るのではない、実行すべきものだ」という自らの発言を体現し、徹底した反戦を貫いた氏は紙幣の顔になるべき日本人だと著者は言う。
著者が長年にわたり執筆した時代と格闘してきた人物評伝をまとめた全7巻の最終巻である本書はほかにも、水俣病と闘い続けた原田正純、職に殉じた官僚の山内豊徳ら8人の志操を貫いた人物の評伝を収録する。
今日の時代状況と合わせて読むと、現在を考えるための視点が浮かび上がってくる。