直木賞作家・今村翔吾氏 駅ナカ書店をプロデュース 小説家デビューゆかりの地・佐賀に恩返し
直木賞作家の今村翔吾氏がプロデュースする書店「佐賀之書店」が3日、JR佐賀駅構内の商業施設「えきマチ1丁目佐賀」にオープンした。
約82.5平方メートルの売り場に児童書や小説、雑誌など約1万2000冊が並び、同氏の作品コーナーも設置。オープン初日は自らエプロン姿で来店客を出迎え、くす玉を割って開店を祝った。
滋賀県在住の同氏だが、デビューの契機となったのは、実は佐賀。今はなき、「九州さが大衆文学賞」(2016年)で大賞を受賞し、選考委員であった北方謙三氏が「プロとして通用する」と出版社に推薦をした一言がきっかけとなった。いわば、小説家としての生誕の地である佐賀への恩返しを果たすべく、今回の出店を決意したのだ。
また、書店減少への危機感も背景にある。氏は2021年に、閉業寸前だった大阪府箕面市の書店「きのしたブックセンター」を引き継いでリニューアルオープンし、2022年に「塞王の楯」で直木賞を受賞後、119日間で全国47都道府県の書店を巡って応援するイベント「今村翔吾のまつり旅」を敢行。イベント中はワゴン車に机を設置して執筆を続けた。
出版不況が叫ばれて久しいが、日本出版インフラセンターの調査によると、今年6月現在の全国の書店は1万1219店で10年前から約3割減少。佐賀県も例外ではなく、4月の佐賀新聞の報道によると1990年代初めの140店近くをピークに右肩下がりが続き、現在は3割以下の約40店にまで落ち込んでいるという。
佐賀の地名はヤマトタケルノミコトが「栄の国」と呼んだことに由来するという。2000年後の佐賀はなんと呼ばれているだろうか。