「中の人」の目線で見る!水族館・動物園関連本特集
「水族館人」SAKANA BOOKS編
一説によると、人は人生のうち3回は動物園や水族館に行くタイミングがあるという。子どものとき、デートのとき、子どもを連れて、の3回だ。今回は、そんな身近な楽園の「中の人」の目線で語られた4冊をご紹介。読めば、「オタ活で」というタイミングが増えること間違いない。
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「水族館人」SAKANA BOOKS編
水族館を彩る数多くの貴重な魚たちは、「海の手配師」と呼ばれるスペシャリストが世界中の海を駆け回って捕獲し、生きたまま運搬して水族館に連れてくる。
石垣幸二氏は日本で唯一の手配師と呼ばれている。仕事の難易度から、世界中を見渡してもこれに従事している人はほとんどいない。
氏は、日本に初めて「ダイオウグソクムシ」を連れてきた人としても知られている。テレビ局から依頼が来たときは、氏ですらもその存在を知らず、どこに生息しているかの特定から作業は始まることになった。ダイオウグソクムシは温度に敏感で、引き揚げる際には冷凍機が必要だった。その費用は600万円。予算は120万円だったが、前人未到という魅力に引かれて大幅赤字の末に日本にやって来たのだ。
ほかにも、クラゲで有名な山形・加茂水族館の名物館長や、館内の音響をつかさどるサウンドアーティストら15人が水族館を語る。
(文化工房 2310円)
「飼育員が教える どうぶつのディープな話」大渕希郷編著
「飼育員が教える どうぶつのディープな話」大渕希郷編著
動物園の人気者であるカピバラ。実は、げっ歯目テンジクネズミ科の生き物で、世界最大のネズミの仲間だ。体重は時に64キロまで達するという。
そして、カピバラといえば「お風呂」。本来は中南米を中心とした川や水辺に生息しているため、日本の冬は寒すぎるらしい。風呂に漬かって故郷を思い出しているのかと思うと、一層愛らしい。本邦初の「カピバラ風呂」は1982年の「伊豆シャボテン動物公園」。きっかけは飼育員が獣舎を清掃していた際に、お湯がたまるとそこにお尻を漬けてじっと動かなくなるカピバラが続出したこと。「これは喜んでいるに違いない!」と発見したという。カピバラは群れで行動するため「家族でくっついて団子状になって休息しているのを眺めるのが乙な楽しみ方」という、職員ならではの観察方法はすぐに試せそう。
ほかにも、ウォンバットのようなマニアックな生き物まで51種が、園長や獣医師、学芸員らの視点で掘り下げられる。
(緑書房 2420円)
「水族館飼育員のキッカイな日常」なんかの菌著
「水族館飼育員のキッカイな日常」なんかの菌著
水族館の大人気の「餌やり」の時間。その裏には職員たちの知られざる苦悩がある。
毎日欠かせない業務である「エサづくり」だが、作業量が尋常ではない。「大きな魚には金魚を」「ラッコには持ちやすいようにサケのスティックを」といったように生き物ごとに種類が違う。
「このコブダイは特定の飼育員からしかエサを食べない」「オニダルマオコゼは長い棒でエサを動かさないと食べない」など、まさに「注文の多い料理店」さながらなのだ。
そして、大水槽ともなるとエサづくりに1時間以上を費やさなければいけない。時間配分をミスすると職員は、自分の昼食を抜いて、生き物のエサをつくるハメになるという。
美術史専攻の、水族館では珍しい文系出身職員である著者が、生き物や同僚たちとともに闘かった日々をつづった奮闘記。生き物たちの生体も興味深いが、著者が描いた4コマ漫画「同僚という生き物」も大笑い必至。
(さくら舎 1540円)
「世界をめぐる 動物園・水族館コンサルタントの想定外な日々」田井基文著
「世界をめぐる 動物園・水族館コンサルタントの想定外な日々」田井基文著
日本は、世界で有数の動物園・水族館大国だといわれているが、どの施設も展示が似通っているという問題がある。
この大量発生のきっかけは上野動物園だ。開園間もないころでも何十万も来園者を集め、1907年の時点で年間100万人に達していたという。当時の日本の人口は、現在の約3分の1で、交通機関も発達していなかったにもかかわらず国民的な人気を博した。
この成功を模倣して日本各地で動物園がオープン。このとき、多くの動物園が参考にしたのは、やはり上野動物園だったため、コピーであふれてしまったのだ。
一方で海外の施設は多種多様。運営母体が民間であることが多いため、ある動物だけに特化して来場者数を増やす取り組みが積極的に行われているのだ。
ほかにも、「震災を生き抜いた水族館のカワウソ」や「いい施設の必須条件は優秀な広報」など、動物園・水族館コンサルタントの著者だからこそ知る、幅広い話題が飛び交う。
(産業編集センター 1870円)