「誾」赤神諒著
「誾」赤神諒著
立花誾千代は、大友宗麟の家臣の戸次道雪の一人娘。道雪は、立花家の当主ではあったが、度々反した旧立花家に対する宗麟のわだかまりを考慮して自身は実家の戸次姓を通してきたが、娘には立花姓を名乗らせていた。
そんな父を慕う誾千代は、一刻も早く強くなって道雪の後を継ぎたいと研さんを積む日々。しかし、武将として生きたいと願う心に逆らうように、成長するにつれ誾千代の体は女として成長し、男の注目を集めるようになっていく。婿取りの話も出るなか、仲間意識を持っていた幼馴染みの高橋千熊丸(のちの高橋統虎)から思いがけない告白を受け、悩んだ末に誾千代は婚姻を受け入れるのだが……。
本書は、「はぐれ鴉」で第25回大藪春彦賞を受賞した著者による、女に生まれたことに違和感を抱く女城主の性に焦点を当てた歴史小説。男のように生きたいと願った主人公が、妻として生きなければならないことに葛藤する様子や、そんな主人公を否定したり、理解しようとしたりしながら混乱する周囲の様子が描かれる。
自らの性に違和感を持ちながら生きることの苦悩が伝わってくる。
(光文社 1980円)