「中野のお父さんと五つの謎」北村薫著

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「中野のお父さんと五つの謎」北村薫著

 雑誌「小説文宝」の編集者、田川美希は、夏目漱石が「アイ・ラブ・ユー」を「月が奇麗ですね」と訳したというエピソードに、同僚の手塚が疑問を感じていることを知った。漱石は「漱石全集」の論評の中で、「此 I LOVE YOU ハ日本ニナキ formula ナリ」と書いている。

 中野の実家に帰ったとき、美希がこの話をすると、父は「ある本の存在に気づけば、《漱石》と《愛の思い》から《月》に繋がらなくはない──ということだ」と言う。それは漱石の教え子の中勘助の「銀の匙」だった。(「漱石と月」)

 ほかに「清張と手おくれ」「芥川と最初の本」など、「中野のお父さん」が5つの文学作品の謎を解明する。 (文藝春秋 1870円)

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