「路上ネコ、22の居場所で222匹」佐々木まこと著
「路上ネコ、22の居場所で222匹」佐々木まこと著
路上に生きる猫たちは、体形から毛の色、柄、長さ、尻尾、目の色、性格まで多種多様で個性的。見ているだけで面白い。
独自の猫社会を形成しながら、路地裏や公園など、さまざまな場所を根城に自由に暮らすそんな野良猫と、家の中と外を自由に行き来する飼い猫、その両方をまとめて「路上ネコ」と称して、著者は写真に収めてきたという。
「22年2カ月」にわたり撮りためたその猫写真は実に500万カットに及ぶそうだ。その中から厳選した222匹を、居場所ごとに22カテゴリーにわけて収録した「にゃん尽くし」の猫写真集。
まずは、漁港や漁船を居場所、遊び場にする猫たちから。
水揚げされた魚をもらったのか、目の前に飛び跳ねている魚がいるのに見向きもしないキジシロ、かと思えば魚の重さをはかる計量器にのって周囲をうかがうような様子の猫もいる。
前者には「今は満腹だなあ。活きがいいのに……。」、後者には「体重を見られないように、こそこそと計測中。」などと、全作品に絶妙なキャプションが添えられており、その場の空気感が伝わってくる。
「チームワークが完璧な猫窃盗団」と題された作品には、出荷待ちの大きな容器の中から魚を盗み出している3匹組が写っている。その3匹はそれぞれ、箱に手を突っ込み魚を取り出す実行犯のポイントカラー系、運び役のキジシロ、そして見張り役の茶白の長毛と、絶妙な一瞬をとらえている。
トラックのタイヤで爪を研いだり、車体に潜り込んだり、「駐車場」は猫の格好の遊び場。
遊び疲れたら、ボンネットやルーフでお昼寝だ。冬には、駐車したての車が暖房の役割まで果たしてくれる。
飲み屋街・風俗街にも猫はつきもの。夜のとばりが下りるころ、居酒屋の店先で眼光鋭く客を見定めている看板猫の茶白は、ベテラン女将の風格だ。暖簾の前には飲み屋の大将気取りのキジシロもいる。
ほかにも、「お寺・神社」の章では、狛犬の足元の隙間や、灯籠の中にすっぽりとハマってご満悦の白三毛猫や黒猫、土足厳禁と書かれた本堂の廊下で堂々と毛づくろいする「髪形」がユニークな白猫などを紹介。また、公園のヌードのブロンズ像に触発されたのか、白昼堂々と始めてしまった茶と黒のカップルなどの公園猫や、牧場で暮らす猫、屋根の上や川の近く、木登りしている猫まで、バラエティー豊かに活写する。
こうしてみると、人間のそばには必ず猫がいることがよくわかる。
世の中には猫嫌いな人も確かにいる。そういう人たちは、通り道に水入りのペットボトルを並べたり、猫が歩きづらくなる市販のとげとげシートを敷き詰めたりして対抗するが、猫はどこ吹く風。
そのそばで堂々とくつろぐ猫たちに、器の大きささえ感じてしまう。
猫を愛する人におすすめなのはもちろん、そうでもなかった人も手に取れば、「路上ネコ」への視線が変わるかも。
(幻冬舎 1760円)