「じゃじゃ馬娘、ジョニ・ミッチェル伝」デヴィッド・ヤフィ著 丸山京子訳

公開日: 更新日:

「じゃじゃ馬娘、ジョニ・ミッチェル伝」デヴィッド・ヤフィ著 丸山京子訳

 今年のグラミー賞授賞式で、ジョニ・ミッチェルがライブパフォーマンスを行ったことが話題となった。ジョニは過去10回グラミー賞を受賞しているが会場で歌ったのは初めて。2015年に脳動脈瘤で倒れたジョニは、22年に奇跡の復活を遂げニューポート・フォーク・フェスティバルに登場。そのときのライブ盤が最優秀フォーク・アルバム賞を受賞したのだ。80歳のジョニが杖を片手に「青春の光と影」を語るように歌う姿は感動的で、歌い終えたジョニに会場から万雷の拍手が寄せられた。本書は1960年代から現在までアメリカの音楽シーンに強い光を投げかけてきたジョニ・ミッチェルの評伝。

 カナダのアルバータ州に生まれたジョニは美術大学に進み、そこでフォークミュージックに出合う。独学でギターを学びクラブなどで歌い始めた頃、妊娠してしまう。自ら育てることはできないとジョニは子どもを里子に出すが、このことはその後の彼女の心の重しとなっていく。その後、フォークシンガーのチャック・ミッチェルと結婚。わずか1年で破局するが、そこからジョニのシンガー・ソングライターとしてのめざましい活躍が始まり、各楽曲とジョニの人生が織り合わされていく模様が語られる。

 ジョニといえば恋多き女性として知られるが、本書でもレナード・コーエン、デビッド・クロスビー、グラハム・ナッシュ、ジェイムス・テイラーらとの関係が赤裸々に語られる。ジョニの家で、クロスビー、ナッシュ、スティーブン・スティルスが偶然居合わせ、3人がハーモニーを奏で、わずか30秒でCS&Nが結成されたなどの興味深いエピソードも事欠かず、アメリカ音楽史の貴重な証言ともなっている。

 本書には「自分自身でいるための自由を守ろう」と、高貴なるわがままを貫くジョニが描かれているが、80歳の今もその矜恃を持ち続ける姿に崇敬の念を覚えざるを得ない。 〈狸〉

(亜紀書房 4950円)

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    西武ならレギュラー?FA権行使の阪神・原口文仁にオリ、楽天、ロッテからも意外な需要

  2. 2

    家族も困惑…阪神ドラ1大山悠輔を襲った“金本血縁”騒動

  3. 3

    9000人をリストラする日産自動車を“買収”するのは三菱商事か、ホンダなのか?

  4. 4

    兵庫県知事選・斎藤元彦氏の勝因は「SNS戦略」って本当?TV情報番組では法規制に言及したタレントも

  5. 5

    小泉今日子×小林聡美「団地のふたり」も《もう見ない》…“バディー”ドラマ「喧嘩シーン」への嫌悪感

  1. 6

    国内男子ツアーの惨状招いた「元凶」…虫食い日程、録画放送、低レベルなコース

  2. 7

    ヤンキース、カブス、パドレスが佐々木朗希の「勝気な生意気根性」に付け入る…代理人はド軍との密約否定

  3. 8

    首都圏の「住み続けたい駅」1位、2位の超意外! かつて人気の吉祥寺は46位、代官山は15位

  4. 9

    兵庫県知事選・斎藤元彦氏圧勝のウラ パワハラ疑惑の前職を勝たせた「同情論」と「陰謀論」

  5. 10

    ロッテ佐々木朗希は母親と一緒に「米国に行かせろ」の一点張り…繰り広げられる泥沼交渉劇