「迷惑な終活」内館牧子著

公開日: 更新日:

「迷惑な終活」内館牧子著

 主人公の原英太は75歳。後期高齢者に入るとあって、妻の礼子はエンディングノートやら遺言状やらの終活を始めろとうるさいが、なぜ生きているうちから死の準備をしなきゃいけないのかと思うにつけ、無視し続けている。

 しかし、そんな英太があることをきっかけにして突如、終活に目覚める。それも礼子が説くような残された人が困らないようにする終活ではない。生きているうちに自分の人生のケリをつけるための活動こそ本当の終活だというのだ。

 英太は、高校時代に片思いをしていた女性を傷つけたことをいまだに悔いていた。彼女に一度会って謝りたいという切なる願いを実行することこそ、自分にとっての終活だと宣言した英太は、周囲に呆れられたり冷やかされたりしつつも、なんとかツテを見つけて彼女にたどり着くのだが……。

「すぐ死ぬんだから」「老害の人」など、高齢者の日常を生々しく描く著者の高齢者小説シリーズの最新刊。残された日々を自分が悔いなく生きることを目標に動き回る主人公と、そこに巻き込まれながら影響を受けて好き勝手に生き始める周囲の人々が切なくも愛らしい。

 (講談社 1870円)

【連載】木曜日は夜ふかし本

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    エースの留年が影響か?昨夏王者・慶応まさかの県大会16強敗退…文武両道に特別扱い一切なし

  2. 2

    松本人志「事実無根」から一転、提訴取り下げの背景…黒塗りされた“大物タレント”を守るため?

  3. 3

    ロッテ佐々木朗希は母親と一緒に「米国に行かせろ」の一点張り…繰り広げられる泥沼交渉劇

  4. 4

    《小久保、阿部は納得できるのか》DeNA三浦監督の初受賞で球界最高栄誉「正力賞」に疑問噴出

  5. 5

    渡辺徹さんの死は美談ばかりではなかった…妻・郁恵さんを苦しめた「不倫と牛飲馬食」

  1. 6

    松本人志「文春裁判」電撃取り下げも待つのはイバラの道…“白旗復帰”画策にも視聴者・スポンサー・制作側から総スカン

  2. 7

    陰で糸引く「黒幕」に佐々木朗希が壊される…育成段階でのメジャー挑戦が招く破滅的結末

  3. 8

    2位「ライオンの隠れ家」、1位「わたしの宝物」を抜く勢い! 坂東龍汰が名作映画ファンの“批判”も封じた

  4. 9

    横綱照ノ富士が「引退できないジレンマ」から解放される日…在位20場所で12回目休場の崖っぷち

  5. 10

    中日・根尾昂に投打で「限界説」…一軍復帰登板の大炎上で突きつけられた厳しい現実