「ウバステ」真梨幸子著
「ウバステ」真梨幸子著
還暦を迎えた売れない作家・駒田世津子は逗子の実家で1人暮らし。20年前、世津子の小説「ウバステ」がテレビドラマ化された縁で、今も元テレビ局プロデューサーの小野坂哲子、シナリオライターの舘川信代、女優の千田友枝、監督の妻だった谷崎寿々の5人で食事会を続けている。
世津子が63歳になったある日、寿々がアパートで孤独死したと連絡が入った。信代に誘われ寿々のアパートを訪れた世津子は驚愕する。そこは、18歳の頃に付き合っていた元カレが住んでいた部屋だったのだ。
そんな中、今度は寿々の元夫で世津子の元カレ・梶谷が不審死を遂げる。悲しみよりも「次は私だ」という強迫観念にとらわれた世津子は、信代に紹介された弁護士の元で遺言書を作成するが、なぜかそのことを友枝は知っていた。
“イヤミスの女王”による最新刊は、老いと死が身近になった女性たちの軌跡だ。物語は夢と現実、過去と今が交錯しながら進み、やがて体調を崩した世津子は小説「ウバステ」のモデルとなった高級老人ホーム「ユートピア逗子」と、自身の出生の秘密に触れる。
まだまだ先のことと思っていた終活が身に降りかかり、不安を覚える主人公の気持ちがリアルに迫ってくる。巻末には終活ノート付き。 (小学館 1870円)