ベスト・マリアージュ!旅と食を巡る本特集
「中華満腹大航海」酒徒著
旅先での、その土地ならではの食材や食文化との出合いは旅の醍醐味。食が旅の目的だという人も多いことだろう。旅と食はまさにベストマリアージュ。今週はそんな旅と食を巡る本を紹介する。
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「中華満腹大航海」酒徒著
本場の中国料理の魅力に取りつかれた著者は、中国料理を食べ尽くすために留学や仕事で中国各地に滞在。その間未知の料理を求めて各地を飛び回り、食べた料理をすべて記録し、その作り方や成り立ちを調べてきた。
その膨大なデータの中から特別に思い入れがある名物料理を、各都市ごとに3種選び、紹介するビジュアルブック。
雲南省の最南端に位置する西双版納■族自治州は、著者いわく「食の桃源郷」だという。
数ある名物から著者が選んだのは茹で鶏にマナオ(タイライム)の果汁を搾り入れ、何種類もの香草をからめた「檸檬鶏(ニンモンジー)」に、とてつもない苦みが広がった後にさわやかな清涼感に代わる不思議なスープ「牛肉苦胆湯(ニウロウクーダンタン)」、滞在中は毎日食べるというライスヌードル「米線(ミーシェン)」の3種。
こうして全15都市の名物料理のおいしさと特徴をレシピを添えて紹介。
中国料理の奥深さを伝える中国食べ歩き記。 (KADOKAWA 1870円)
「のみ歩きノート」牧野伊三夫著
「のみ歩きノート」牧野伊三夫著
酒場巡りを趣味とする画家による酒と酒肴をめぐるエッセー集。
毎日、午後3時ごろになるとどんなに忙しくても頭のなかは晩酌のことでいっぱい。風呂に入りながら最初の一杯に何を飲むかを考える。風呂から上がり、小皿の煮豆やチーズやらでひとしきり飲んだ後は、七輪の炭火もいい具合となり、肉を焼いたり、小鍋をかけたりして、夜更けまでぼんやり飲み続けるという。そんな日々の晩酌スタイルを明かしながら、さまざまな酒の肴や、無造作に作るからこそ生まれるチューハイのおいしさなどについてつづる。
さらに、会社員時代に出張で出かけた青森県八戸で入った卓上に一升瓶が置かれた常連客だらけの安酒場や、モザンビーク沖に浮かぶ島国マダガスカルを旅したときに現地の人と飲んだラム酒を巡るひと騒動など。
これまでに通ったさまざまな酒場の思い出とともに口にした酒や酒肴について語る酒飲みにはこたえられない一冊。 (筑摩書房 1980円)
「日本ご当地おかず大全」菅原佳己著
「日本ご当地おかず大全」菅原佳己著
旅先で立ち寄るご当地スーパーはお宝の宝庫。その土地の食文化と気軽に出合える最適の場所だ。
本書は、各地のご当地スーパーで定番商品として売られている、その地域ならではの「おかず」を紹介するガイドブック。
まずは北海道民の春のお楽しみ「山わさび」を一年中楽しめるように瓶詰めした「山わさび醤油漬」や、北陸3県で年間8万缶以上売れる人気の缶詰「たらの子味付」、博多の朝食の伝統的なおかず「箱崎おきゅうと」など、朝食のおかずで日本を縦断する。
以降、青森おでんに欠かせない極薄の大判さつま揚げ「大角天」や、岐阜県の郷土料理「けい(鶏)ちゃん」、赤カブの葉を塩を使わずに漬けた長野県の「すんき」など、魚と肉、野菜それぞれを使ったメインとなるおかず、さらにレトルトなどのお手軽おかず、そしてご当地調味料まで。何度も日本を縦断しながら400超の逸品が紹介。
旅に出かける前の予習やお取り寄せの参考に。 (辰巳出版 1650円)
「旅と食卓」河村季里著
「旅と食卓」河村季里著
2022年の秋、コロナ禍の日本を飛び出し、パリと南仏をめぐった旅をつづった紀行エッセー。
パリ初日の夕食は、無難にミシュラン1つ星のホテルのセカンドダイニングに予約を入れてある。3つ星のメインダイニング・エピキュールが素晴らしいので、こちらも大丈夫かと予約を入れたのだが、出てきたタルタルステーキに幻滅。しかし、パリ滞在の楽しみは、パリ一番と言われるエピキュールでの朝食だ。
スタッフとのやりとりを楽しみながら2時間かけて朝食をとり、午後は美術館や街を散策する。
パリで3泊した後は南仏のアビニョンに移動、アパートメントホテルに宿をとりレストラン「ラ・ミランド」に向かう。
以降、サン・レミ・ド・プロバンスからゴルド、ニースなどを経て再びパリに戻り、「ギイ・サボア」へ。各レストランで口にしたメニューとその味の詳細をつづりながら、ぜいたくと口福の40日間を追想。いつかこんな旅をしてみたいと思わせる。 (角川春樹事務所 1870円)