女優・吉沢京子が感謝する故・勝新太郎からの“大人扱い”
しかも、カゲのある薄幸の少女役も初めて。前年に公開された「父ちゃんのポーが聞える」(東宝)でも悲劇のヒロインを演じましたが、そちらは病弱の少女です。当然、演じ方は全く違ってくる。それで、シーンごとに気がついた点を勝さんが指摘して下さったのですが、その都度「なるほど」と思うことばかりでしたね。
弟の最期を耳にして悲しい表情を浮かべるシーンでは、お稽古をしていたら、それをご覧になっていた勝さんが「今の表情だ。そのままでいろ」っておっしゃって、そばにカメラを持ってきて、方向を変えながらアップで撮影したこともあったんです。
さらにうれしかったのは、まだまだヒヨッコの私を大人の女優として扱って下さったこと。
テレビドラマ「柔道一直線」(69年、TBS系)で人気が出た私は、眠るとき以外はマネジャーと付き人が四六時中そばにいて、トイレにも誰かがついてくるような不自由な毎日で、どこの現場でも若手扱いでした。
ところが勝さんは違ったんです。私のスケジュールを尊重しながらきちんと対応し、居心地が良くなるように気遣って下さったんです。