著者のコラム一覧
野地秩嘉ノンフィクション作家

1957年、東京生まれ。早稲田大学商学部卒。出版社勤務などを経てノンフィクション作家に。人物ルポルタージュや食、芸術、文化など幅広い分野で執筆。著書に「サービスの達人たち」「サービスの天才たち」『キャンティ物語』「ビートルズを呼んだ男」などがある。「TOKYOオリンピック物語」でミズノスポーツライター賞優秀賞を受賞。

<第6回>組合も納得させた「唐獅子牡丹」の美しさ

公開日: 更新日:

 なぜなら、本作で彼が背負う唐獅子牡丹の彫り物は任侠映画史上、最高の出来だからだ。

 この映画で助監督を務めていた高倉健の僚友、降旗康男監督はこう説明する。

「当時、東映の労働組合は時間外撮影を拒否していました。撮影は午後5時までには絶対に終了しなくてはならなかったのです。ですから、健さんには朝早く来てもらって、急いで彫り物を入れてもらった。彫り物を背中に描くには時間がかかるからです。だが、その日はなかなかできなくて、助監督だった僕は何度も早くしてくれと言いに行った。やっと出来上がったのは午後4時。それから1時間ではとても殴り込みのシーンは撮影できません。しかし、出来上がった彫り物を見たら、すばらしい出来栄えだった。後にも先にもあれほど美しい唐獅子牡丹を見たことはありません。あまりにもきれいだったから、わたしたちは組合の執行部と話をして、その日は夜間撮影をして、殴り込みのシーンをすべて撮りました。あの彫り物は『昭和残侠伝』シリーズのなかでも、もっとも美しいものです」

 降旗監督は「いまでも思い出します。すばらしい出来だった」と語る。

最新の芸能記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    ロッテ佐々木朗希は母親と一緒に「米国に行かせろ」の一点張り…繰り広げられる泥沼交渉劇

  2. 2

    米挑戦表明の日本ハム上沢直之がやらかした「痛恨過ぎる悪手」…メジャースカウトが指摘

  3. 3

    陰で糸引く「黒幕」に佐々木朗希が壊される…育成段階でのメジャー挑戦が招く破滅的結末

  4. 4

    9000人をリストラする日産自動車を“買収”するのは三菱商事か、ホンダなのか?

  5. 5

    巨人「FA3人取り」の痛すぎる人的代償…小林誠司はプロテクト漏れ濃厚、秋広優人は当落線上か

  1. 6

    斎藤元彦氏がまさかの“出戻り”知事復帰…兵庫県職員は「さらなるモンスター化」に戦々恐々

  2. 7

    「結婚願望」語りは予防線?それとも…Snow Man目黒蓮ファンがざわつく「犬」と「1年後」

  3. 8

    石破首相「集合写真」欠席に続き会議でも非礼…スマホいじり、座ったまま他国首脳と挨拶…《相手もカチンとくるで》とSNS

  4. 9

    W杯本番で「背番号10」を着ける森保J戦士は誰?久保建英、堂安律、南野拓実らで競争激化必至

  5. 10

    家族も困惑…阪神ドラ1大山悠輔を襲った“金本血縁”騒動