仏テロ背景の移民問題を浮き彫り 映画「サンバ」の出来ばえ
仏パリで起きた連続テロ事件が世界を震撼させている。アルジェリア移民の子として生まれ育った兄弟が犯行グループに含まれていたことから、欧州では移民排斥運動にも火が付いている状況だ。
移民と現地労働者の対立自体は今に始まったことではない。「マダム・マロリーと魔法のスパイス」(14年、米ほか)、「バンクーバーの朝日」(14年、日)など、ここ2カ月ほどでも移民ネタの映画が立て続けに公開されるなど、急激にこの問題に関心が集まっている空気は映画界にも伝わってきていた。そうした流れの極め付きが「サンバ」(14年、仏=公開中)だ。
アフリカのセネガルから渡仏して10年間、レストランで真面目に下働きを続けてきたサンバ(オマール・シー)は、ささいなミスからビザの更新期限を切らしてしまう。無情にも国外退去処分を受けた彼は、移民対策ボランティアのアリス(シャルロット・ゲンズブール)の協力と、持ち前の前向きな性格で解決に努力するが、事態はそんな2人をあざ笑うかのように悪化の一途をたどるのだった。
フランスにおける移民青年の転落人生をディテール豊かに描き、安易な移民政策に警鐘を鳴らすこの映画は、どこかくだんのテロリストの境遇と通じるところがある。事件が起きた後の今みると、その先見性は恐ろしさすら感じさせる。