俳優・村田雄浩「芝居とお酒の下積みがあったから今がある」
当然、酒のニオイはプンプン。時には二日酔いでグロッギー気味のこともありました。それでも当時は酒に寛容というか、おうような時代。他にも酔っぱらったまんま駆けつける役者やスタッフが大勢いましたから、大目に見てくれてたんでしょう。
飲めない酒を、なぜ飲むようにしたか? やはり先輩や仲間との垣根を取っ払い、本音や普段話さないことを聞くためです。とくに僕は先輩から経験談や芝居のイロハを聞くのが大好き。そのために酒席に通ったようなものです。
映画デビューは80年公開の「思えば遠くへ来たもんだ」(朝間義隆監督)ですが、映画全盛期のような製作方法は無理になり、さまざまな制約の中でみんな工夫していました。かといって、いくら予算や撮影日数が削られても、時代劇なら武士や商人、農民、それぞれの所作、作法、動作の基本は変わりません。むしろ基本をきちんと押さえなければ、NGなしでテキパキと撮影は進まない。僕たち役者も、それを求められていました。
現場で“芸を盗む”のも一つの手。それも直接教えてもらえるならそれに越したことはない。先輩には役者もいれば、照明さんや大道具・小道具さんもいます。そんなプロから聞けるなんて最高じゃないですか。酒席はその格好の場なんです。