囲碁史上初7冠 井上裕太の才に磨きかけた1000局の鬼指導
日本棋院広報室の小瀬村尚久氏が言う。
「幼稚園のころから地頭が良かったのでしょう。その優秀な頭脳を石井先生が“すごい才能だ。どこまで伸びるのか分からない”と絶賛。幼いころの1000局に及ぶ指導が才能を開花させたといわれています。石井先生ご自身も“この弟子を持ったおかげで私も強くなった”と言っているほどです」
小学2年で少年少女囲碁全国大会で優勝し、中学1年でプロ入り。中学時代、あまり学校に行かなかったことは有名だ。高校にも進まず、研究会などで研さんを積む囲碁まみれの毎日だった。
09年に20歳で名人位を奪取したときは「44年ぶりの最年少記録」と騒がれた。天才棋士というと、常識はずれな無頼漢のイメージがあるが、井山氏は普通の人だそうだ。
「いつも明るくて、私たち職員にも気を使ってくれる好青年です。ご本人はいつも“僕は知識が少ないんです”と笑って謙遜しています。穏やかな性格ですが、負けず嫌いな面も持っている。対局で負けたときは悔しさをにじませているので、われわれも近寄れません」(小瀬村尚久氏)
生まれ持っての頭脳と囲碁にどっぷりの生活、負けず嫌いな性格、師匠との1000局――。この4条件によって七冠に輝いたといえるだろう。