新藤風監督が追いかける 映画に心血注いだ祖父・兼人の姿
1950年に独立プロ「近代映画協会」を創設し、自ら牽引してきた祖父にすれば一つ一つの作品は我が子同様にいとおしい。それに構想から企画、準備、資金、撮影、編集、配給、宣伝に至るまでトータルで携わり、もちろん作品の出来、興収の良し悪しが会社の存続に関わります。
■生きるか死ぬかの気持ちで現場に立つ
その一方で年々落ちる体力。「これが最後」と毎日、生きるか死ぬかの気持ちで現場に立っていました。疲労困憊して夜を迎えるので、宿泊先でベッドに入るときは「お休み」じゃなかった。それだと永遠にお休みしてしまいそうですから、「また明日ね」。朝は「おはよう」ではなく、「生きてる?」。毎日、生存確認でしたね。
そうやって撮影に臨んでいたのを目の当たりにしていますから、「映画監督に必要なものは」と問われたら、間違いなく「作品にかける情熱と思い入れの強さ」だと答えます。実際、祖父の熱意にキャストもスタッフも日に日に引き込まれていくのを感じましたし、「この監督のためなら!」という一体感が現場に生まれて、作品作りに結びついたと思います。