講談師・神田松鯉「何年も酒は買ってない」 そのワケは?
講談にはよく酒の話が出てくるんですよ。「赤垣源蔵・徳利の別れ」は名作です。討ち入りの前に兄さんのところに別れの挨拶に行くと兄はまだ帰っておらず、仕方がないので兄の羽織を代わりに見立てて、羽織相手に話をしながら酒を飲んで別れを告げ、討ち入りに向かうという話です。その気持ちはわかりますね(笑い)。「冬は義士、夏はお化けで飯を食い」っていって、11月ごろから3月ごろまで講談では義士の話が続きます。討ち入りは12月。大石内蔵助の命日が2月(旧暦)で、歳時記でいうと「大石忌」という春の季語があるんです。
これまで酒を飲んで、ケンカや口論になったことは一度もありません。芸人は人様に好かれて可愛がられてなんぼの世界ですからね。飲む席は断らず、飲んだら陽気に楽しくが一番。楽しい思い出ばかりです。
歌も歌います。昔はフランク永井さんの歌を全部歌えました。似てるっていわれたことはないけど、フランクさんより2音低くして歌えた。低音の魅力でね……今はダメ(笑い)。
(講談師・神田松鯉)