そして、なぜ、このような魅力を放つことができたのか。もちろん、演劇、ピンク映画などで培った演技の下地が大きいだろう。それは演技論で解明されるわけもなく、その過程で彼が独自に会得していった何物か、なのに違いない。それを一足早く、見いだしたのが、監督・北野武だといわれている。北野はあるテレビ番組であくまで劇中の話だが、大杉について「(自分が最初に)生かして、(最後は)殺しちゃった」と語っていた。実に恐ろしい言葉である。
大杉漣――。往年の大スターたちとは違った持ち味で、この時代の人々を深く魅了した。いぶし銀の先をもっと、もっと、見たかった。