ベールに包まれた森田童子さん 時代の“痛み”背負い生きた
そんな彼女が時代に合わせた歌を歌うわけがない。
引退後はメディアに出ることを拒否したため私生活は秘密のベールに包まれたが、マネジャーだった前田亜土氏(2010年没)と結婚し、お子さんもいると聞く。
むろん、真偽の定かでないウワサも多々ある。
中でも根強くささやかれたのが、ある有名作詞家の姪ではないかという風説。ファンサイトでもしばしば取り上げられたが臆測の域を出ない。
初期の歌には「球根栽培」「孤立無援の思想」という政治の季節を象徴する歌詞が並ぶ。
「球根栽培」とは爆弾製造法のことであり、「孤立無援――」は学生に人気のあった作家・高橋和巳の著書だ。
学生運動に共感を寄せた彼女はとめどなく右傾化する今の日本をどう見つめてきたのか。
森田童子さんはある時代の「痛み」を背負って生き、殉じたといえる。合掌。
(演劇ジャーナリスト・山田勝仁)