「蜜柑とユウウツ~茨木のり子異聞~」 詩人の魂を昇華
1986年に松金よね子、田岡美也子、岡本麗の3女優が結成した演劇ユニットの解散公演。2015年に初演された作品であり脚本の長田育恵が第19回鶴屋南北戯曲賞を受賞している。
サブタイトル通り、教科書にも載っている「わたしが一番きれいだったとき」で戦後詩に名を残す詩人・茨木のり子がモチーフになっている。
舞台はのり子が亡くなって4カ月後の居宅。「気がかり」があるため、のり子の魂の一部は「ノリコ」(松金)となってこの世にとどまり、同じ日常を繰り返している。
ノリコの「気がかり」が何であるのかを一緒に見つけようと、現れたのが、のり子と同じ日に死んで、次の転生を待つ紀子(岡本)と典子(田岡)。2人はノリコの分身でもある。「気がかり」の元を突き止めるべく過去を振り返る。
軍国少女だったのり子、敗戦、自由への目覚め、安保闘争、結婚、詩人としての活躍、夫との死別、30余年の独り暮らし……。
一方、のり子が遺したという未発表原稿をめぐって出版社社員・喜多川(小嶋尚樹)とのり子の甥の浩二(古屋隆太)が右往左往。そこにのり子の親友・葉子(木野花)が加わる。そんな彼らをそばで見守る謎の管理人・保(小林隆)……。