山根明様に“ショービズの狂気”を描いたデ・ニーロの名作を
テレビ界でスターになろうとするルパートは才能を認められず、いわゆる炎上商法で、誘拐犯となってスポットライトを浴びます。自身の才能と別のところでフィーチャーされ、出所後はテレビに引っ張りだこで、ついには自伝を出版するまでに。ショービズの世界に入りたい人は誰しも持っている、自分は才能があるという「大いなる勘違い」、世間にチヤホヤされて妄信する半面、次第に自身の才能を評価されていないストレス、自身の無能を否定したい感情を、まるで傷口に塩を塗るかのように淡々と描いています。
スコセッシとデ・ニーロはイタリア系移民出身というハリウッドの少数派コンビ。数多くの作品でタッグを組んできた2人は、無名の移民からスターダムへと上ってきたキャリアにおいて、“互いがあって現在の地位がある”と認める朋友で、中でも「キング・オブ・コメディ」は2人の名作。デ・ニーロは人格や背景、深層心理まで掘り下げて、まるで憑依したかのように演じる「メソッド演技法」を学んでおり、本作ではメソッドアクターならではの“狂気の演技”が際立っています。
山根氏も今後、テレビタレントとして活動していく旨を発表。さらには3月には自伝を発売するとか。芸術家のアンディ・ウォーホルは「未来では誰でも15分なら有名になれる」と語っています。アマチュアボクシング界のキングメーカーだった山根氏ですが、自身がキングになれるのか。
リンクする部分の多いこの作品を見ていただいて、ちょっと立ち止まってみてはいかがかなと思います。