ヒロシさん<1>親にバイトと言われ…保険会社に採用される
大学4年生で周囲が就職活動を始めていたが、本人はしなかった。
「1社行ったくらい。それも、友達から『大阪に話を聞きに行くと交通費が出て革のシステム手帳がもらえる会社がある』と聞いて、タダで旅行ができると思ったから。お笑い芸人になりたかったから、まともに就職活動はしなかったですよね」
しかし、卒業後、22歳で保険会社に入社する。
「親が持ってきた話で、バイトだって言われたから、それならいいかと思って行ったんです。社員として採用されてしまった。僕がお笑い芸人をやりたがっているって分かっていて、なんとか食い止めたかったんでしょうね。しかも、個人営業です。僕が一番生きない仕事。知らない人にバンバン電話したり、訪問したり……。保険は大体の人は入っているから、他社から僕の会社の保険に移し替えるというね。それを勧めるわけですが、僕の性格には合わない」
1カ月で辞めようと思ったという。給与の振り込みを確認した翌朝、会社に連絡せずに行かなくなった。 =つづく
(取材・文=小野真依子/日刊ゲンダイ)