松竹とは蜜月でも…歌舞伎座“ジャニーズファン集め”の難関
六本木歌舞伎は海老蔵が「新しい歌舞伎」を模索するなかで始めたプロジェクトのひとつで、ずっと三池崇史と組んできた。1作目は宮藤官九郎が脚本を書き中村獅童が共演し、これもメタフィクション的要素があった。2作目はリリー・フランキーが脚本を書いた「座頭市」で、寺島しのぶが共演した。女優が出る点では歌舞伎らしくなかったが、きわめて正統な演劇だった。
第3弾「羅生門」はというと、見ている間は楽しい。だが何も残らない。そういうのを目指しているのだろうから、それはそれでいい。それぞれの見せ場もたっぷりとある。
「人間のエゴ」がテーマだと海老蔵はプログラムにある対談で語っているが、そういうテーマ性は何も感じなかった。その設定自体がメタフィクションの一部なのかもしれない。
(作家・中川右介)