少年院の成人式祝辞は決まっている「こんどは刑務所だよ」
才賀が某刑務所の看守から聞いた「金庫破りのゲンゾウ」の話である。
「ある地方都市の信用金庫が新型の金庫を入れたのはいいが、営業課長が金庫に閉じ込められちゃった。金庫のマニュアル書を持って入ったから、職員の誰もが開けられない。そこの警備員が地元の刑務所の看守だったことで、刑務所に、『収監されてる金庫破りのゲンゾウだったら開けられると思うので、緊急事態ということで特別に一時出所させ、信用金庫まで連れてきてもらえないか』と頼んだわけです。金庫内の酸素が切れて窒息死する危険があるので、人命救助なら仕方ないと、刑務所長の計らいでゲンゾウが連れてこられ、見事に金庫を開けて命を救ったという話です」
こういうドラマのような話が実際にあるのだ。
「この話にあたしがオチを付けました。ゲンゾウは人命救助をした功績で、懲役を免れ“キンコ刑”になったという」
さすが落語家、うまいオチを付けるものだ。
才賀は久里浜少年院の篤志面接委員を務めているので、院生の成人式に招かれ祝辞を述べることもあるとか。