たけしは店に来て店員と居合わせた客全員にご祝儀を配った
多くの浅草芸人を見てきてつくづく思うことは、浅草の芸人は、なんて言ったらいいんだろう、どこかその人にしか出せない「味」があるんだよな。たけしも師匠の深見さんのそれを肌で感じて盗んできたんだろうな。深見さんはよく、「たけしのバカ野郎が、たけしのバカ野郎が」って言ってたけど、その後、たけしが、「ダンカン、バカ野郎」を連発しているのを見て、ああ、師匠と同じだなと思ったよ。
たけしは浅草にいたころ、深見さんによく寿司屋なんかに連れていかれてたけど、深見さん、帰り際に必ず店の人とお客さん全員にご祝儀を配るんだ。
で、今はたけしがうちに来ると、帰り際に、天使の羽の絵が描いてあるポチ袋を「はい、これ」なんて言いながら、うちの店員とお客さん全員に渡して帰るんだ。中には1万円札が入ってる。たけしは年に何回か来てくれるんだけど、やってることは、師匠と全く同じなんだよ。
それから俺に「兄さん、これ」ってまとまったお金を置いていく。俺はそれを大事に袋に入れておいて、若い芸人が来ると、「今日はタケちゃんから預かってるから。今度会ったらお礼言っといてよ」って、その金で飲ませてやるんだ。