テーブルに台本を投げ出した桂文珍師匠が伝えたかったこと
文珍師匠がMCを担当する「ゲームコーナー」の本番30分前に、ADさん(アシスタントディレクター)が「そろそろ(スタンバイ)お願いします」とやって来ました。
コピー用紙5枚ほどの進行台本の2枚目をめくり、真顔で「僕にはできません」とテーブルに投げ出されたのです。ADさんは言葉を失って立ちすくみ、隣にいた私も一瞬何が起こったのかわからず、“生放送やのに……”と唖然として師匠の顔を見ていました。
顔色の変わったADさんの「あの……」という言葉を制し、
「“よろしく”て書かれても、私にはどうすればいいのかわかりません。きちんと内容を書いた台本をください。こういうものを台本とは呼ばない!」と、抑えた口調ながら周囲もその張りつめた空気に固まってしまいました。
「失礼します!」とADさんが走り去ってほどなくして、旧知のプロデューサーが慌てて来て、「師匠なんかありました?」という言葉にかぶせるように、
「これはいくらなんでも手抜きすぎやで、こんなんでギャラはろたらあかんわ」