著者のコラム一覧
本多正識漫才作家

1958年、大阪府生まれ。漫才作家。オール阪神・巨人の漫才台本をはじめ、テレビ、ラジオ、新喜劇などの台本を執筆。また吉本NSCの名物講師で、1万人以上の芸人志望生を指導。「素顔の岡村隆史」(ヨシモトブックス)、「笑おうね生きようね いじめられ体験乗り越えて」(小学館)などの著書がある。新著「1秒で答えをつくる力──お笑い芸人が学ぶ『切り返し』のプロになる48の技術」(ダイヤモンド社)が発売中。

テーブルに台本を投げ出した桂文珍師匠が伝えたかったこと

公開日: 更新日:

 文珍師匠がMCを担当する「ゲームコーナー」の本番30分前に、ADさん(アシスタントディレクター)が「そろそろ(スタンバイ)お願いします」とやって来ました。

 コピー用紙5枚ほどの進行台本の2枚目をめくり、真顔で「僕にはできません」とテーブルに投げ出されたのです。ADさんは言葉を失って立ちすくみ、隣にいた私も一瞬何が起こったのかわからず、“生放送やのに……”と唖然として師匠の顔を見ていました。

 顔色の変わったADさんの「あの……」という言葉を制し、

「“よろしく”て書かれても、私にはどうすればいいのかわかりません。きちんと内容を書いた台本をください。こういうものを台本とは呼ばない!」と、抑えた口調ながら周囲もその張りつめた空気に固まってしまいました。

「失礼します!」とADさんが走り去ってほどなくして、旧知のプロデューサーが慌てて来て、「師匠なんかありました?」という言葉にかぶせるように、

「これはいくらなんでも手抜きすぎやで、こんなんでギャラはろたらあかんわ」

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