著者のコラム一覧
一雫ライオン作家

1973年、東京都生まれ。明治大学政治経済学部2部中退。俳優活動を経て、35歳のときに演劇ユニット「東京深夜舞台」結成を機に脚本家に転身。主な脚本作品に、映画「TAP 完全なる飼育」「サブイボマスク」、東野圭吾原作「パラレルワールド・ラブストーリー」など。2017年に家族愛を描いた「ダー・天使」(集英社)で小説家デビューし、翌年「スノーマン」出版。最新作は幻冬舎から出版予定。

書きゃいいのだ。脚本家や作家になりたけりゃ書けばいい

公開日: 更新日:

「へ?」

 Y氏がストローをくわえたまま顔を見上げた。「書きゃいいんですよ」

■「人を感動させたい」なんて大きなお世話

 だってそうなのである。書きゃいいのだ。脚本家や作家になりたけりゃ書けばいい。なぜならこの仕事はお医者さまや司法関係者や料理人のように国家資格が必要なわけではない。そんな仕事を「どうすればなれるか?」などと聞いてくる若人はアホであり、即刻こんな外道な世界に足を踏み入れぬほうが賢明である。もしそれでもなりたい……と言うのであれば、書いて出版社に応募する、バイトとして出版社に潜り込み信頼を得た後で原稿を読んでもらう、読んでくれぬならおっかないお兄さんに大金払って脅してでも目を通してもらう、やり方は腐るほどある。そんな話をY氏にすると「それは極論」と嘆き食い下がる。なので仕方なく「その若者はなんで物書きになりたい、って言ってるんですか」と問うとほれ来た。予想通りの答え。

「人を感動させたい、って言うんです」

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