脚本家・三谷幸喜さんが語る“シットコム”への新たな思い
Amazonプライム・ビデオの日本オリジナルドラマシリーズの第1弾として、先月から配信された香取慎吾主演「誰かが、見ている」(全8話)が、世界配信されている。埼玉県のあるマンションに住む青年が失敗する様子を、隣の部屋の住人が見ているというシチュエーションコメディー(シットコム)だ。作・演出の三谷幸喜さんにドラマについてと、シットコムへの新たな思いを語っていただいた。
■香取慎吾さんは身体的な笑いがすごくうまい
――オリジナルドラマ配信の反響はいかがですか。
テレビは視聴率がすぐ出るし、映画も公開された翌日にはだいたいの数字がわかるけど、まだ結果は出ていません。アマゾンさんも初めてのオリジナルのコメディードラマですし、配信中なので最終的なことはわかりませんが、今まで配信してきたドラマの中ではいい成績のようです。子供たちがハマってくれて楽しんでいるらしい。そこも狙いのひとつではあったので、うれしいです。僕の息子が6歳なんですけど、友だちと香取さんや佐藤二朗さんのマネをしてますし。
――往年の米国ドラマ「奥さまは魔女」のようにシチュエーションコメディーは1話完結が多い。だが、本作は連ドラのように話が続きます。
シットコムは大好きだけど新しいパターンを考えたかったし、一挙配信ということもあって、毎回同じパターンのエピソードを繰り返すのではなく、話が続いていくようにしました。他にも、シチュエーションコメディーなのに撮影場所をワンセットの1カ所に限定せずロケを入れたり、主人公は最終回までに成長したりと、シットコムのルールを裏切ってます。でも、見終わって「これはやはりシットコムだな」と思っていただけるとうれしいんです。
――主演の香取慎吾さんとは「HR」(フジテレビ系、2002~03年)以来、17年ぶりのシットコムドラマになりました。
正直な話、「誰かが、見ている」は香取さんありきの企画。「香取さんでドラマを作らないか」とアマゾンさんに言われた時に、僕が「香取さんとならシットコムをやりたい」とお答えしました。例えば香取さんは一人で部屋にいて洋服の袖がドアノブに引っかかるとか、何かにつまずいて転ぶとか、そういう身体的な笑いがすごくうまい。前々からそれに気づいていて、いつか香取さんで、セリフに頼らない動きの面白さを生かしたドラマはできないかと考えていたんです。Mr.ビーンとか、昔で言うとサイレント映画のバスター・キートンとか。動きの方が世界に配信できるコメディードラマが作れる気がして。だから香取さん演じる舎人真一が一人で部屋にいる設定にして、それだけではドラマにならないから、隣の部屋でそっと見ている男がいるという。