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一雫ライオン作家

1973年、東京都生まれ。明治大学政治経済学部2部中退。俳優活動を経て、35歳のときに演劇ユニット「東京深夜舞台」結成を機に脚本家に転身。主な脚本作品に、映画「TAP 完全なる飼育」「サブイボマスク」、東野圭吾原作「パラレルワールド・ラブストーリー」など。2017年に家族愛を描いた「ダー・天使」(集英社)で小説家デビューし、翌年「スノーマン」出版。最新作は幻冬舎から出版予定。

物書きは人と出会ってなんぼ 出会いも文字にして原稿料を

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〈で、どうするんだい?〉と返事を送ると、〈コロナがあけたら、インドに行ってみようと思います〉とのこと。おいおい、君がインドなんかに行ったら余計おかしなことになって、それこそ社会に戻れぬかもしれぬ。〈大丈夫か?〉とさらに返事をすると、〈大丈夫です。実家はたらふくお金がありますので、なんとかなります〉とのこと。

 ふーん。潔い。ここまではっきりと「金はある」と言われたらなんか心配無用だ。どうにか生きられるのだろう。作家になりたいのを辞めた理由は至極単純。「なんか、たいへんそうだなと思いました」とのこと。余計なこと言いすぎたかしら、などとちょっとは反省したが、なに、いつの世もやりたい人間は「辞めろ」と言われてもやるもので、そこまでの気持ちだったのであろうし、それだけ冷静でもあったのだろう。

 ふと、この子はどんな顔をしているのだろうと思った。声は太いのだろうか、細いのだろうか。どんな趣味があるのか。好きな子はいるのか、恋はしているのだろうか。

 薬もでき、コロナが無事にあけ、彼がインドへ行ってしまう前に――。

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