物書きは人と出会ってなんぼ 出会いも文字にして原稿料を
〈で、どうするんだい?〉と返事を送ると、〈コロナがあけたら、インドに行ってみようと思います〉とのこと。おいおい、君がインドなんかに行ったら余計おかしなことになって、それこそ社会に戻れぬかもしれぬ。〈大丈夫か?〉とさらに返事をすると、〈大丈夫です。実家はたらふくお金がありますので、なんとかなります〉とのこと。
ふーん。潔い。ここまではっきりと「金はある」と言われたらなんか心配無用だ。どうにか生きられるのだろう。作家になりたいのを辞めた理由は至極単純。「なんか、たいへんそうだなと思いました」とのこと。余計なこと言いすぎたかしら、などとちょっとは反省したが、なに、いつの世もやりたい人間は「辞めろ」と言われてもやるもので、そこまでの気持ちだったのであろうし、それだけ冷静でもあったのだろう。
ふと、この子はどんな顔をしているのだろうと思った。声は太いのだろうか、細いのだろうか。どんな趣味があるのか。好きな子はいるのか、恋はしているのだろうか。
薬もでき、コロナが無事にあけ、彼がインドへ行ってしまう前に――。